==思うがままに==

2004年6月23日のエッセイ


関東防空大演習を嗤う
 沖縄慰霊の日の東京新聞夕刊1面見出し、「韓国人人質殺される」、「駅員撃たれ重傷」、「男児突き落とし中2女子を補導」。もう、目を覆いたくなる。 

 このおかしな世の中の様子が戦前に酷似していると、戦争を体験された方々があちこちで指摘している。中でも『昭和史』を執筆された半藤一利氏は、「戦争は庶民に始まる。軍もマスコミも庶民もみな愚かで、あの戦争に向かうとき、世の中はあっという間に変わってしまった」。そして今の「このところの武張った政策と、マスコミの無力、何よりも庶民の変質」がかつてと同じだという。  

 さらに、成立なった有事法や国民保護法の議論は、「いったいこの狭いわが国土に敵の上陸を許すような戦闘を、議員諸公は本気で想定しているのだろうか」と憤り、1933(昭和8)年の桐生悠々の有名な論説「関東防空大演習を嗤う」を否応なしに想起するという。

 「だいたい本土上空に敵機襲来という事態は日本軍の敗北そのものではないか。私たちは、かかる実戦のあり得ないことを、従ってかかる架空的な演習を行っても、実際は、さほど役に立たないだろうことを想像するものである」。

 まさにその通りになった。確か雑誌『AERA』だったと思うが、あの山本五十六連合艦隊司令長官は真珠湾攻撃後に、すでに米軍による東京空襲があることを銀座の料亭の女将に送った手紙に書いているそうだ。そして3か月後実際に空襲を受ける。

 先が見える一部の人は、日本が負けることはわかっていたにもかかわらず、戦争を回避することができなかった。一旦戦争へと傾くと誰にも止められない。今なら、まだ間に合う。共にがんばっていきたい。
No.419


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