言葉の貧困は世界を狭める

                                    

東京新聞2003.6.22 6面 発言欄

学生寮寮監 辻井篤生 44歳 (東京都小金井市 )

 15日付社説「いでよポスト小泉」に「跋扈」という漢字を使用していたので安心した。というのは先日、自分たちが作る同人誌でこの「跋扈」という漢字を使っていたら年下の男女から、「こんな難しい漢字は誰も意味が分からない」と言う声が出た。
 
 「これぐらいはわかるだろう」と言うと「こんな古色蒼然たる言葉を使うとは」と易しい言葉に置き換えられないこっちの責任のようにのたまう。ところが、「跋扈」を読者が理解できないからではなくて、この男女とも自分たちが読めず、意味もわからなかったのだ。

 確かに文章は分かりやすく書かなければならない。しかし、そのために語彙が少なくなるのはいかがなものか。言葉は長い歴史の中で現実の事象を言い当てて妙として生まれきた。その言葉の数が増えれば増えるほど新しい世界が開け、より広く深みのある人生になる。言葉が少なければ少ないほど単純な発想しかできず、短絡的な行動へとつながってしまう。
 
 何でも易しくという風潮は日本社会の将来のためにならない。

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