Home > 2月 7th, 2010

本物の伝統文化

 相撲界は理事選挙と朝青龍問題で大変である。朝青龍問題はもっとどうにかならなかったかと思うが、何ともしょうがない。理事選挙、これを伝統文化か現在の常識かというような単純な構図にしているから面白くない。
 
 伝統文化や徒弟制度そのものが悪しき慣習のように思わされ、ますます軽佻浮薄な世の中へとなってしまうのではないか。もちろん公職選挙法という現代のルールはそれをきちんと遂行しなければならない。しかし、それは相撲道を未来に発展させていくものであり、つまり真の伝統文化として次世代につないでいくためのものであろう。

 他にも例えば、伊勢神宮では20年に1回、神殿をすべて取り壊して新しいものに作り替える。これを現在の常識からみれば、「新しい物好きの日本人と関係あるのではないか」とか、「何年も保つのにお金がかかるではないか」とか、「環境問題からよろしくないのでは」との意見がでる。しかし、これは20年というところに着目しなければならないのだ。

 春日大社権宮司の岡本彰夫氏によると金銭や物の耐久性の問題ではなく、技の継承がからんでいるのだそうだ。つまり、20歳の息子、40歳の父親、60歳の祖父という3代でつないでいく。これが10年なら短すぎるし、30年だと間隔が開きすぎてうまく伝わらない。

 このように何でも近代で伝統や慣習を切っていいものではないのだ。要は私たちは何を先代から受け継ぎ、何を後世に伝えるのか。表面上の事柄ではなく、その本当のもの、本物を見極めなければならないと思う。
 
 今日は夜7時から東京学生寮2月の月例祭で、今回も私が祭主と教話の御用をさせていただく。お話は前回触れた「本然のいのちが承服する」ということは、様々な事柄に「本当はどうなのか?」、「本当の○○はどこに?」と問うこと自体にあるのでは、について、また別の観点から話してみたいと考えている。