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東京学生寮2017年度卒寮生送別会

3月4日午後7時から、東京寮月例祭の後、2017年度卒寮生送別会を開催した。卒寮生入場、思いでの写真上映、それぞれ在寮生からの送辞、卒寮生答辞、寮監・主事からの贈る言葉、記念品贈呈が行われた。

 寮監の贈る言葉の要旨
 「人間のものさし」は目盛りがあるが、「神様のものさし」は目盛りはない。だから測ることができない。人間のものさしは測れるために、そこに「長・短」、「大・小」、「上・下」、「優・劣」など価値が生まれる。するとその価値を比べて悩んだり、役に立たないものは差別したり、排除してしまう。

 あらゆる不幸は比べることから始まり、現代人の悩みの全てが人間関係にあると言われている。あらゆる不幸は人と比べることから始まる。

 もちろん人間のものさしも必要で、これがないと世界は成り立たない。しかし、この世界は目に見える世界ばかりではなくて、目に見えない世界でも成り立っている。特に現代社会は目に見えるところだけしかないとしてしまったために様々な歪みが生じている。神様のものさしを持ってこの世の中は目に見えない世界でも成り立っていることを知ることが必要。

 神様のものさしで計るということは、比べずに全ての存在を大切にする。だからこそ測らない。目盛りがないから比べようがない。

 では、どうすれば神様のものさしを持てるか。比べるのではなくて、物事を見る、物の見方を変えたり、視点をずらすことで全ての存在の大切さを知っていく。

1 思い込み、固定観念を解くために常識を疑う。目に見えない世界は疑うのに、目に見える世界は疑わない。これは逆。目に見える世界を疑い、目に見えない世界は疑わない。
2 視点をずらす。時間、場所、空間。
3 複眼的に見る。逆も真なり。
 物の見方を変えることによって比べるのではなくて、全ての存在の大切さを知っていく。

 そして神様のものさしを持って全ての存在を大切にしていく生き方として、「おかげ様」「お互い様」で「お先にどうぞ」との3つの「お」の生き方を提唱している。

「おかげ様」
 ものごと「それ常識じゃん、当たり前」と思うところに感謝の心は出てこない。実は当たり前にあることは当たり前にあるものではない。気仙沼でのボランティアで、ある被災者の方が、「地震前の暮らしは、夢のような生活でした」と仰った。その当時ボランティアに行っていた寮生たちは、東京にいる自分たちは「夢のような生活をしているんだ」と当たり前のことが当たり前ではないと実感した。私たちは失ってはじめてものの大切さ、事柄の大事さを知るが、失う前に当たり前ではないと「おかげ様」のこころで感謝していく。

「お互い様」
 今の若者たちはまじめで誠実な人が多い。そして完璧主義で何でも100%を目指す。しかし、所詮人間は弱い存在で100%は無理。だからこそ、「お互い様」と助け合うことが必要。人も100%信頼してはいけない。98%信頼して、あとの2%は相手が間違った時の許しのためにとっておく。人間は不完全なもの。それなのに100%信頼するから許せなくなる。100%信頼した関係はかえって壊れやすい。

「お先にどうぞ」
 エレベーターの前で「お先にどうぞ」と言うのは難しくない。しかし「タイタニック号、最後の救命艇、最後のシート」を前にして、「お先にどうぞ」と言うのはそれほど簡単ではない。現実になった時にどうするかはわからない。この問いはそれを問うているのではなく、生き方の問題。もしそれまでの人生、悔いのない、やり残したことのない生き方をしていれば「お先にどうぞ」と言えるはず。つまり、その時、その瞬間を丁寧に生きているかどうか。よく「なぜ勉強するのか?」との質問に「いい大学に合格するために」、「いい会社に就職するため」、「将来立派な大人になって幸せになるために」と言う。しかし、これでは高校や大学の勉強は単なる準備期間、手段となってしまい、その価値を失う。ここでも将来と今を比べてしまっている。人間にとってどんな世代もどの瞬間もその後の人生のためにあるのではなくて、今月今日に価値がある。この究極の「お先にどうぞ」を意識していれば、普段の生活で少々後れをとっても「お先にどうぞ」と言いやすく、人と比べて悩むこともなくなる。

 これからの人生いろんなことが起こってくる。時に背水の陣で退路を断つことも必要なこともあると思うが、退路は確保しておいた方がよい。人生時に逃げることも必要。その安心できる逃げ場所にもちろんこの東京寮に来てくれればいいし、近くの教会に普段からお参りして、何事があろうと安心できる場所を確保して、信心しておかげを蒙って頂きたい。
(当日実際は時間の関係で「お先にどうぞ」のところをお話しできなかったので、卒寮生の皆様にも読んで頂きたく加筆しています)

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