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第37回 沖縄遺骨収集奉仕参加 完 2010年2月

 その後、その周辺を伐採、捜索したが、出てきたあごの骨や大腿骨はどうも馬か山羊か動物の骨であった。そしてあっという間に時間が過ぎ、最後に御祈念をさせてもらう。一般の那覇市の方で昨年から参加されている女性が、白布、お線香、お水を持参されている。

 お骨を乗せた白布にお水と4班の班長さんは御神酒をお供えし、全員で「祖先賛詞」と「天地書附」を奉体して御祈念をさせて頂いた。私は御祈念の時に、「お腹が空いただろう」、「心細かったろう」、「寂しかったろう」、「辛かったろう」、「臭かったろう」、「痛かったろう」とその方に思いをはせ、お慰め申し上げ、そしていまだに相争っている人間の愚かさを心からお詫び申し上げ、御霊様の立ち行きを神様に祈らせて頂いている。

 御祈念の後、4時からの慰霊祭に間に合うように撤収した。テント前では本部のスタッフの方がお茶とおしぼりを用意してくださっており、サーターアンダギーと今年は沖縄みかん「タンカン」を頂く。ほっと一息、ありがたいかぎり。私は地べたへとへたり込んでいた。

 すると、本部テント後方のところで関口さんが『あいよかけよ』誌の取材のためにアメリカからの参加者ロンさんに取材をしている。ロンさんは今回、赤ちゃんの頭骨などを収集された。関口さんにその頭骨を見せるためか、才田さんがすでに本部テント内に設けられた祭壇にお供えしてあったその赤ちゃんの頭骨が入った白布を押し頂いて持ち、私にも来るようにと目で合図してきた。 

 あわてて飛び起き、関口さんとロンさんのところに行く。すでに3、4人が取り巻いている。才田さんが恭しく白布をはずすと、本当に小さな赤ちゃんの頭と思われる頭骨が現れる。その瞬間、なんと黒アゲハチョウが赤ちゃんの頭骨の上を私の右手から左手にさっと飛んでいった。私はもう本当に驚いた。この赤ちゃんの御霊か、母親の御霊ではないか。

 私は「今飛んできたよね」と確認するために後ろを振り返ると、土居先生も目を丸くして「確かに飛んでいった」と頷いている。もし、黒アゲハチョウがしょっちゅうそこら辺を飛んでいればまあそんなものかと思うが、今日見たアゲハチョウは午前中に見たのと2匹のみ。それもさっと現れて、もう二度と現れない。その異様な雰囲気に遺骨収集で来ていた他の団体の方も集まってきて、赤ちゃんの頭骨を見て驚きの声をあげている。

 この黒アゲハチョウの出現は、私たちに何かを語りかけているとしか思えないのだ。「こんな悲惨な出来事はもう私たちで終わりにしてほしい。なぜ相変わらず相争っているのか」と。私は沖縄戦の実相にふれるたびに、残忍で汚辱にまみれたなまなましい地獄体験を前にして、いかなる戦争をも肯定できるものではないと強く思わされるのである。

 神様の子ども同士が、相争い、殺し合う。神様がもっとも嘆かれる行為を愚かにもいまだに続けている。この最たる過ち、ご無礼をお詫び申し上げ、神様が願う世界真の平和に向けて、小なりといえども頑張ってまいりたいと願っている。(おわり)

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