Home > 5月 23rd, 2012

「楽」と「楽しい」

 「楽」と「楽しい」は、同じ漢字を使うが、意味は違う。楽をしては本当の楽しみを得ることはできず、苦労を乗り越えてこそ本当の楽しみを得ることができると人にも言ってきた。しかし、それではなぜ同じ漢字をあてるのか。必ずやその漢字には意味があり、同じ字をあてる意味もあるはずとずっと考えてきた。
 先日、その答えにはっと気がついた。これも「逆も真なり」であった。このことに気がついたのは、今の社会風潮というか、苦しみを乗り越え、努力し、頑張っても、必ず幸せになれない世の中にますますなっているのでは、と考えていたときのことだ。
 今の世の中は、それどころか要領のいい人間が比較的楽をして富み、まじめに苦労した方が報われない。「努力すれば報われる」はウソで「努力しても報われない」とますますやる気を失い、心に病を抱える人も増えている。
 苦労を乗り越え、努力して、幸せをつかむのだと教えられてきたが、これは方向が逆だと気がついたのだ。つまり、目的がはっきりして、それを楽しんで行えば、苦労も努力もそう辛いものではないのだと。
 「好きこそ物の上手なれ」という言葉があるが、息子の野球や娘のドラム練習をみていて、好きなことは端から見れば辛いことでも、当人はほとんど苦労とは思ってない。これだったのだ。「楽をして」→「楽しい」ではなくて、「楽しい」→「楽」、つまり楽しいからこそ楽なのである。だから同じ漢字をあててるのだと。
 最初に「苦労を乗り越えて」ではなくて、自分の本当にやりたいこと、好きなことを見つけ、目的をはっきりさせること。これが大事だと。それさえ見つかれば、少々の艱難辛苦は乗り越えることができ、生き甲斐や使命感を持ち、本当の幸せをつかめるのだと思う。