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自身の信心を確かめる 6  「三つのお」 お先にどうぞ

 三つのおの最後、「お先にどうぞ」。これは内田樹氏の著書で知ったのだが、エマニュエル・レヴィナスという哲学者が、「倫理の根源的形態とは『お先にどうぞ』という言葉に集約される」と述べているそうだ。
 
 「たいていの人間にとって、ドアやエレベータの前で鉢合わせした時に『お先にどうぞ』と言うのは簡単なこと。しかし、東京から博多までの新幹線指定席が取れず、自由席になだれこんだところ、あと1つだけ空いている席の前で誰かと鉢合わせした時に『お先にどうぞ』と言える人はかなり少ない。

 ましてや、沈みかかった客船の最後の救命ボート、その最後の空席を前にして『お先にどうぞ』と言える人は皆無に近いのではないか。しかし、レヴィナスは『あらゆる場面でお先にどうぞと言い切れること、それが倫理的に生きることである』と述べている。

 あらゆる局面で『お先にどうぞ』と言えるために最も重要なこと、それは今この瞬間に死に臨むことがあっても『私は、これまでの人生を悔いなく生きてきた』と言い切れることでもある。そういう状態になっている心構えを『幸福』と呼ぶのでは」と、内田樹氏に教わった。

 これは、時々刻々、その瞬間、瞬間に頂いている命を新たな気持ちで実意に生ききる、まさに教祖の教える「今月今日」てあり、三代金光様の「日々がさら」の教えに通ずると思う。4代金光様は、それをくっつけて「日々がさらの今月今日」とお歌を詠まれている。

 「お陰さま、お互いさまで、お先にどうぞ」の三つのおの実践は、「お礼を土台に」、「何事もあいよかけよで」、「日々がさらの今月今日」という本教信心の真髄につながるものであると考えている。(つづく)

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