『戦艦武蔵』

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P1070648.jpgのサムネール画像 寮改修工事2HP用.jpg 寮に帰ると建物全体が白いクロスでスッポリと覆われていた。お見事、さすがプロである。私はすぐに、吉村昭氏の小説『戦艦武蔵』を思い出した。寮の足場は270㍍もある戦艦武蔵とは比べものならないが、機密保持のため誰にもその姿を見せずに建造したという小説の内容だ。

 武蔵の船台の周囲には漁具に使う棕櫚(しゅろ)を用い、すだれ状の目隠しが全面に張り巡らされた。全国から膨大な量の棕櫚を極秘に買い占め たために市場での著しい欠乏と価格の高騰を招き、警察が悪質な買い占め事件として捜査を行ったとされる。

 対岸にはアメリカ・イギリスの領事館があり、目隠しのための遮蔽用倉庫を建造したり、憲兵や警察を大量動員して徹底的に取り締まった様子が書かれている。その巨額な資金と人材をつぎ込んで建造した武蔵が、実戦では、ちょっと出ては温存のため内地に修理に戻り、結局活躍することなく海の藻屑となってしまった、という何とも悲哀な物語である。

 戦中は人命を軽視する思想により、それは軍艦や零戦のように、防御よりも攻撃力の性能が重要視されるといった兵器にも影響した。そして多くの人々が犠牲となり、使い捨てにされた。

 戦艦武蔵が登場する頃には、目も当てられないような状況を呈していた。どう理屈をこね、正当化しようとしても、そうした思想を先導し、多くの犠牲者を出した当時の上層部、指導部は万死に値する責任があると思う。
 
 寮の改修工事から全く関係のないところに話がいってしまったが、この小説には戦争と平和について考えさせられる内容がある。ぜひ、ご一読を。

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このページは、つっさんが2011年1月 8日 10:06に書いたブログ記事です。

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