「宗教者の平和責任」特別講演

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 昨日は、「宗教者九条の和」主催の下記の特別講演会が東京都港区青山の「梅窓院・祖師堂」で開催された。以下に講演概要と本教から「講演者との応答」として登壇した田中元雄先生が述べられた発言の概要を記す。

講演 宗教者の平和責任 ~核廃絶に向けて~
スティーブン・リーパー(広島平和文化センター理事長)

 日本の皆様は裕福で危機感を感じてない。しかし、世界は未曾有の危機を迎えている。本日はその現状認識とどうすれば解決に向かうかについて核廃絶問題を視点にお話しする。

 核拡散防止条約(NPT)は、中国が核を保有したときにこれ以上核保有国を増やさないために、核軍縮を目的にした条約で1970年に発効した。その第6条で「誠実に核軍縮交渉を行う義務」と規定しており、核の廃絶を約束している。しかし、25年間の期限付きで導入されたため、発効から25年目にあたる1995年にNPTの再検討・延長会議が開催され、条約の無条件、無期限延長が決定された。そこでその後5年ごとの再検討会議を開催することが決められた。

 そして2000年には、明確にすべての核兵器の廃絶を約束したが、その5年後の2005年は9.11テロ事件の勃発により、約束が無効になり失敗に終わった。今年の5月はちょうどその5年後であり、正念場の会議となる。当初はオバマ大統領の登場で成功するのではないかと楽観視されたが、最近のNGOたちは「失敗するのでは」と疑念を抱いている。それはイランとアメリカが緊張し、イランが核を保有することになるとサウジアラビアが必ず核をもつことになる。イスラム教のスンニ派とシーア派の対立の影響で必ずそうなり、中東の盟主エジプトも続くのは確実である。

 現在の危機は、ヨーロッパから続いてきた1000年の白人支配の最後のアメリカ中心社会が終わろうとしているからである。かつて世界の覇者イギリス帝国が終わった後に第1次、第2次世界大戦があった。現在は戦後ではなく、第3次世界大戦の戦前である。さらに安価なオイル100円時代が終わり、オイルばかりではなく水、土地などあらゆる資源が奪い合いになる激しい競争時代を迎える。貧富の格差はますます拡がるであろう。地球の半分は毎日200円以下の生活を強いられ、その半分は100円以下、3.6ごとに餓えで人が亡くなっている。世界を秩序立てるパワーが緩み、貧しい国や地域ではテロが多発する。環境は破壊されこのままではこの地球上に住めなくなってしまうのだ。

 この問題をどう解決していくかについて二つの道がある。それは暴力による解決か、話し合いによる平和解決かである。自分のことや自分の国のことしか考えないあり方は必ず失敗するであろう。我々の生き方を愛をもって真剣に変えなければならない。戦争文化から卒業して平和の文化を創らなければならない。それを決めるのが今年の5月、人間は核兵器を使うか、廃絶するかだ。核兵器廃絶は9人のリーダーが決断すればいい。簡単なのだ。CO2削減は全人類が取り組まなければなかなか進まない。
 
 皆さん、1935年の日本人になって考えれば、よく理解できると思う。日本はアジアの中で一番裕福で強い国であった。今私が話しているように10年後、経済はゼロになり、都市が破壊され、草を食べるようになったと言っても誰も信じないであろう。しかし、可能性はある。

 この未曾有の危機の克服には、日本が一番大事である。幸いなことにオバマ政権が誕生した。全面的に頼ることはできないが支持しなければならない。オバマが変わればもっとダメなリーダーが出るであろう。オバマを強くするために日本がサポートし、そして外圧をかけなければならない。世界の平和文化のリーダー、ヒーローになってほしい。

 なぜ暴力に頼ろうとするか、それは核の傘や抑止論をいまだに信じているからである。しかし、国も何も持たないテロ集団は全く復讐を恐れていない。そこに抑止が働くわけもない。もう一つは軍事産業によって儲けている一部の人間たちとそれに支配されている人々がいるということだ。これを変えていくためには草の根の下からの運動でしかない。

 その時の宗教者の役割が絶大なものがある。日本の宗教者は平和運動を趣味でやっているようにも見える。ガンジーやキング牧師のように真剣に取り組んでほしい。幸い宗教者は死んだ後も保証されている。死ぬ気で、「暴力と戦争は絶対に許さない」、「核兵器を絶対に廃絶する」と一致協力して声を大にして発信していただきたい。そして毎晩平和を祈ってほしい。

 本教から「講演者との応答」として登壇した田中元雄先生(大崎教会長)は、概要次の通り述べられた。

 地球は二つの病に冒されている。核戦争という心臓麻痺と環境破壊というガンである。その病気による死まであと何分かという世界終末時計がシカゴ大学に設置されている。

 1953年のアメリカとソ連が水爆実験に成功の時があと2分。その後、1991年のベルリンの壁とソビエト連邦の崩壊で17分前に戻った。21世界は平和の世紀と期待し、米ソの緊張が解ければ戦争が遠のくと思われたが、その後核が拡散してしまった。身体は、血管は詰まり、動脈瘤、動脈硬化、糖尿病を引き起こし、心臓どころか肺や腎臓まで冒され致命的な欠陥で瀕死状態となっている。  

 そして、2007年の北朝鮮核実験によって5分前まで縮まり、2010年オバマ大領の核廃絶発言により1分だけ延びて6分となっている。南北問題、環境問題の悪化の中で、非核化は喫緊の課題であり、週末時計をどこまで戻せるか。リーパー師の今が分岐点というお話しに触発され、共感し、賛同するものである。

 さて、宗教者の平和責任について、本教も戦前国家に協力せざるを得ず、その責任を果たすことができなかった。そこで戦後は「戦争に加担しない教義の確立」、「国家と一線を画す」、「平和に向けた運動」の3つについて重点的に取り組んできた。

 宗教者は世俗の価値を相対化できるし、本質を見極め物事を単純化できる。その宗教の特性を持って理念、理想を打ち出していく。一方絶対的価値をもつがゆえに独善的、排他的になりやすい。しかし、宗教はその根本に人類の助かり、共存、共通の通底する願いを持ち、対話・協力、共に働く文明を形成していくことが可能である。自己批判しつつ生まれ変わり、それぞれの教団的エゴを突き破り、世界平和を実現していく使命があると考えている。

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このページは、つっさんが2010年2月14日 18:48に書いたブログ記事です。

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