千葉県佐倉市に国立歴史民俗博物館がオープンした。この展示室は「戦争と平和」「戦後の生活革命」をテーマに、1930~1970年代の生活用品や出版物などを展示。日本軍の兵舎や戦後の闇市を再現した模型もある。
しかし、沖縄戦の集団自決について、沖縄の元守備隊長らが作家の大江健三郎さんらを訴えた「沖縄ノート」訴訟が継続していることなどを理由に、当館の展示内容を検討するために設けられた委員会の複数の委員から「慎重を期すべきでは」と指摘が出され、後掲のように展示パネルの文案が修正された。
日本女子大学の成田龍一教授は、「集団自決への軍関与は、研究者の間で定着している歴史的事実。司法判断や政府見解を参考にすることはおかしい。展示はあくまで研究水準を投影すべきだと」と指摘している。
私もそう思う。国家や政府はこのたびの外務省密約文書破棄問題でも明らかなように、自分たちの都合の悪い情報は改竄、隠蔽、破棄するのが習いである。生死にかかわる重要な情報を知っている者が生き残り、情報から一番遠い者は、騙され、欺かれ犠牲となる。
過去の過ちを直視しなければ、必ずや未来に同じ間違いを起こす。そのための学問ではないか。自国民、日本民族を悪くいうのは辛いことである。しかし、だからこそ事実は事実として認め、未来の人々に真実を伝える責任があるのではないかと強く思う。
【修正前】
「集団自決」 米軍からの投降の呼びかけを前に、集団自決をはかった人々が数多くいた。その背景には、住民への軍国主義教育や軍人からの指示や命令など、住民の意思決定を左右する戦時下のさまざまな要因があった。
【修正後】
「戦場の民間人」 激しい戦闘で多くの人びとが生命を落としたほか、犠牲者のなかには、戦闘ばかりでなく、「集団自決」自決に追い込まれた人びともいた。
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