時空を超えて助けてくださる師匠

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 今から6年前、ある難儀でオロオロとうろたえていた時に、金光新聞東京支局でふと手に取った教会長信行会講話記録『神願を生きる』(2004〈平成16〉年12月刊行)に助けられた。それには、わが師匠井手美知雄先生の「生き神の道をたどる」という講話があった。その中の特に次の文章である。

 「『山寒うして花の発(ひら)くこと遅し』という、茶掛けの名言があります。山里は春の訪れが遅く花の開くのも遅いが、しかし春は必ず訪れる。そして、深い雪が消えると、一斉に花を開き、人々を心ゆくまで楽しませます。人間も同じようなもので、時至って人格が出来上がれば実に見事であり、人々に生きる喜びを与える。しかし、なかなかスパッと助かっていかない。それは、一人一人には、わが心が開かれるのに、絶対時間とでもいうものがあるからである。三日で気付く人もあれば、何十年もかかる人もいます。その人が本物になっていく時間です。その長い短いが重要なものではなくて、その時間を神様から持たせてもらうことができたということが、大事なわけです。」

  状況に追いつけず、冷静さを欠いていたとき、この文章で落ち着きを取り戻し、だんだんに、だんだんに、まさに薄紙をはぐように、氷が次第に溶けていくようなおかげをいただいた。

 それから、つい最近のことであるが、午前中東京センターで御用している時にある方から電話がかかり、その容易ならぬ内容にとらわれ、夕方頃まで御用が御用にならなかったことがあった。

 気分転換にと東京センターの本棚を眺めていると、昨年開かれた教会長信行会の記録『結界取次の充実と助かりの実現』が目に入った。この本は教会には配布されていると思うが、寮にいる私はうかつにもこの記録本の存在を知らなかった。

 あ、これはまたわが師匠井手美知雄先生が講師であったと思い出し、読み始めた。そして次の文章で、またまた落ち着きを取り戻し、敢然と腹が据わった思いにさせていただいた。

 「通常、人は何かをつかもう、つかもうとします。解決したい、手にいれたい、立派でありたい。つかもうとするんです。そういう考え方、身の処し方をします。それらは限界があります。そういう考え方がゆるゆるほどけて溶けていって、『一切構わない』という世界が出てくる。」

 これは師匠の教会の結界取次でなかなかおかげにならない時に、神様にお詫びばかり申していたときのことだ。師匠が次のように悟られた。

  「しかし、ある時かつ然として、申し訳ないとか、辛いとか、それは余裕じゃないのか。自分がかわいいだけ。自分が暗くなるから、よしよしと頭をなでて慰めてもらいたいだけ。その人のことをいよいよ祈っていけ。そういうことがなくて、ご無礼ですとか、お粗末ですとか、不行き届きとか、そつなく言っているだけ。お前さんは、手順手続きの慣用句を言っているだけ。そう言って、神の辛さに追い打ちをかけているだけ。それを神が寂しく思う。神様は、委細承知、先刻ご承知、まるまる抱きかかえて下さる」と響いたそうである。

 また、その頃ご祈念で神前拝詞を百巻以上あげることを修行のつもりでしていたが、それがノルマとなり、苦しくなり、一切やめたそう。つまりは神様が先刻すべて知っているから。祈りとか修行は赤ちゃんのように素直になることであり、「どうともしてくださいというほどのことで、何かを与えてくださいというより、力をよみがえらせてくれる、そこに神様が力を貸してくださるのだと思います」という文章に先の文章が続くのだ。

 「神様はすべてご承知であるから、とらわれるな」ということであると思う。師匠ほどには到底いかないが、この文章を読ませていただき、私もかつ然と目を見開かされた思いがし、助けていただいた。

 常識でいえば、難儀が降りかかったときにたまたま師匠が出ている本を手に取ったということになる。しかし、二回も偶然が重なることは、これはもう信心の世界ではまさに師匠が時空を超えて助けにお出ましいただいたと確信している。信心の世界に偶然はないことを改めて実感した。

 この二つの講演は、素晴らしいご内容がある。各教会や金光図書館に行けばあると思うので、他の先生共々お読みいただきたい。 

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このページは、つっさんが2010年12月21日 17:11に書いたブログ記事です。

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